春の山
そろそろ九重にも春が来ている頃、そう思って出かけた。
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登山口までの道路沿いに、山桜が植えてある。
嬉しいなあ、ソメイヨシノの並木にはもうあきあきしているから。
私はこの、葉が赤くて楚々とした花をつける山桜が好き。
昔の人が歌に詠んだ櫻花とはこれだろうと思うと、なおのことである。
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山あいに、白い明かりとなって咲く山桜が美しいと思うが、植えてあったとしても良いものだ。
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今日は風が強いせいか、遅く着いたのに駐車場が空いている。
夏山に備えて、そろそろトレーニングを始めないといけないので、今日は2リットルの
ペットボトルを2本、リュックに詰めて歩き出す。
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登りは胸突き八丁、でもきつい登りには慣れている。
稜線に出て見下ろすと、やあ、山が目覚めるちょうどよい時に来たようだ。
全山広葉樹に覆われた前衛峰の、なだらかな斜面が、いちめんぼうっと明るい。
芽吹く寸前の、梢の先に新芽がのぞきだした頃は、山がこんな色になるのだ。
木によっては赤みの出るものもあるが、九重の原生林は白っぽくなって、山全体が
ぼんやりとしてくる。
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強風の中でも、ザックからカメラを出して撮らずにはいられない。
美しいものって、花とは限らない。
自然の中にはいくらでもあることを、私は知っている。
もっと登ると、さらにのんびりとした曲線が広がった。
これからめきめき樹林は芽を伸ばして、来月5月には緑が山を覆うだろう。
隠れた所にあった生命が、梢の先から噴き出して空に向かうのだ。
眠っていた山が、命を吹き返す時がくる。
その始まりに立ち会えてよかった。
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今日から重量を持つ訓練を始めたのだが、新しいザックはとても背負いやすくて楽だ。
10年以上使った古いザックと並べてみると、その差は歴然としている。
左が新たに買ったもの、右は古いの。
背中にあたる部分の作りが、全然違う。
10年も一緒に行動したザックには愛着もあるが、やっぱり新しくして良かった。
肩ひもがほどけそう。 これはちょっと危険かな。
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夏山に向かって、新しいザックと共に身体を鍛えなくっては。
いくつになっても。