春の鷹
春はまだかと思っているうち、突然怒涛のごとく押し寄せた。
いつもこんなだが、あまりのすばやさに毎年戸惑いを感じるのは私だけだろうか。
もう少しゆっくり味わって迎えたいのだが。
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3月半ばからはハイタカの渡り開幕である。
いつものように、機材8キロを抱えて山に登る。
低山ではあっても、シーズン初めはいつも筋肉痛になってしまうきつさだ。
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山の上から見下ろす景色は素晴らしく、ヤシャブシの新緑の中に、咲き出した山桜が美しい。
曇天だと海の色もさえないが、晴天の時は青く美しく輝く。
春はすべてが生命に満ち、光にあふれている。
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お腹いっぱいのハイタカがゆく
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そして、ミサゴも低く飛んでくる。
彼らは繁殖期のさなかで、ペアで仲良く飛ぶかと思うと、単独でやってきて低空飛行し、
巣材をこの山で調達して運んでゆくのだ。
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ここに登りだして10年目だが、こうやって毎年楽しめることは幸せだ。
人の営みには色んな困難があり、世界も混乱に満ちているが、この自然を前にするとき
ああ、生とは素晴らしいと、無条件に思う。
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春の歌
いずこにも 光満ちたる春の日に
などか昔のこと淋しかる
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タカを見送る
桜咲き 若葉波うつ尾根越えて
鷹遂に出づ 青海原へ
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見下ろして ぐるり広がる大海の
ひかりの中を鷹ひとすじに飛ぶ
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いつまでも めがね覗きつ追う鷹は
光れる海に 点と消えゆく
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