春のタカ
野山に出ると、春の気配が満ち満ちていた。
気づくとすっぽり春に覆われている、3月はそんな月である。
さあ、ハイタカが飛ぶゾ。
三脚をかついで山を登る私を待たずに、もう飛んでいくのが見える。
ああ、急がなきゃ。
翼をすぼめて、向こうも急いでいる模様。
「今日中に大陸まで行くつもりサ。」
低く来るもの、頭上高く行くもの、海上を渡るもの。
波止場に泊まる船の上を飛ぶのは、春らしくていい。
春の海は、開放感をはらんでいる。
どこか遠くへ行きたくなるような。
そして、春の山はまだ眠りから完全には醒めず、木々の色も萌え出だす前。
そこを、ハイタカが行く。
やがて4月になれば、山桜が薄桃色の花を誇るようになる。
その上を飛ぶ彼ら、これを上手に撮るのが、いつもの春の目標。