人生の終わり方
幼なじみのお父さんが亡くなった。
92才、というより、あと数日で93才。
入院もしないままの自宅での死であり、天寿全うであろうが、多少の残念さが残る。
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その日はめったにない飲み会参加で、幼なじみ(男性)は玄関ではなく裏口から帰宅
した。
翌朝、玄関に行ってみるとお父さんが倒れていた。
すぐに救急車を呼んだが、もう息はなかったようで、救急車が警察へ連絡。
そのあとは、警察の調べがあって「犯人扱い」だったとか。
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無理もない状況ではあるが、彼は、目が悪くなった一人暮らしの父上を案じ、東京に家族
を残したまま単身実家へ戻って、6年ちかくも面倒をみてきているのだ。
息子と水入らずで晩年を過ごせた父上は、きっと幸せだっただろうが、最期の日に
限って息子は留守で、独り冷たい玄関で亡くなることになってしまった。
夕方の戸締りにでも行かれたのだろうか。
むろん、息子である彼自身の落ち度では全くない。 あまり飲んで帰ることは
ないんだ、と常々言っていたから、断れなかったのだろう。
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誰のせいでもない残念なことであり、私の思いもそこに残る。
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私の母も、仏壇に供える水仙を取りに出た庭で転び、骨盤骨折。
戸口までは這って帰ったが、その先には進めず、帰宅した私が扉を開けるまで
倒れていた。
猫が大声で鳴き続けるので、不審に思いつつ家に入ると、倒れた母が目に入った。
その衝撃。
救急病院に入院して、そのまま1年後に亡くなった。85才であるから、
長命のうちではあるのだが、私の後悔は、1年の間に2度しか帰宅させて
やれなかったことである。
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友人の父上は、その後の解剖で、倒れた拍子に肩を強打・骨折して内出血したことに
よる、出血性ショックだった、という事実が分かり、彼は「犯人?」から「孝行息子」に
戻ることができたが、通夜では疲れた表情を見せていた。
まあしかし、現代では幸運な亡くなり方の部類には入るのだろう。
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若い頃は、生きていくのが難しく、年老いれば、死に方が難しい。
常に問題を抱えながら生きていくのが人間である、と言ってしまえばそれまでであるが、
人生を生き抜くのは、なかなかに困難だと思う。