夏山
日本で高山といえば、3000メートル以上の山を指す。
そのうちいくつ登ったか、とある時考えて、あと数座で登りきることに気づいた。
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それからである、意識し始めたのは。
年をとってからでも登れそうなところは後回しにして、少しづつ行くことにした。
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学生の時に深田久弥は読んでいたが100名山については知らずじまい。
それでも、富士山は偉大なる通俗、というその言葉は胸に響いた。
当時は若く、すべてが山中心の日々。
1年に何日山へ入るか、などということへ意識は向いていて、合宿は1週間ほどの
縦走が中心。
尾根を歩いて山々を経巡ることが喜びなのに、一心に登れば下るしかない富士山は、
山とも思えなかったのだから、若気の至りとはそういうものなのか。
とうとう登らずに仕舞っている。
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それはさておき、今年は「年をとっても登れそう」と取り置きしていた山へ、その順番が
ついにやってきて行くことになった。
2年ぶりにテントをかついで、南アルプスへ。
テントは重いが、張ったらそこで定着して、軽い荷物での登山である。
年をとっても行けそうと踏んだのは、それゆえだ。
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沢の音を聞きながら眠れるロケーション、ここにテントを張る。
数日間睡眠不足が続いたので、明るいうちから昏々と眠る。 いくらでも眠れる。
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翌日の登りはきつく、筋力の衰えを痛感することしきりだったが、心に緑風が吹き込んだ
ごとく、おおいにリフレッシュした。
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千丈岳、3033メートル。
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高山植物の盛りは過ぎているが、それでもイワギキョウが爽やかに揺れていた。
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写真は撮れなかったものの、登りの森林帯で見た小型の鷹、ツミ。
そして、足元のすぐ先で砂浴びをしていたライチョウ親子。
私たちを喜ばせてくれる相手に事欠かなかった良き山だった。
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あと残る3000メートル峰は、富士山、御岳山、乗鞍。これだけである。
乗鞍は、まだずっと後でも行けそうだし、御岳山はご承知のごとく入山禁止。
こうなると、富士山の位置がだんだんと重みを増してくる。
今年は無理でも、いつか行くべきか。
人が多いのは、ほんと嫌なんだけど。