トムラウシ山 1
トムラウシ。 大雪山の奥にあるここは、いつか行きたい山だった。
体力のあるうちでないと無理、そう思い立ってテントを買い仲間を募り、実現できた。
登り終えた今、満足感で一杯である。
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ロープウェイで登って白雲岳まで1日行程。
ここまでは日帰り可能だが、そのあとは何事かあっても逃げ道がなく、行くか戻るか
それのみ。
しかし、この山の真骨頂は、ここからだった。
厳しい所には、許された者にのみ与えられる、素晴らしい自然があるのだ。
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夕焼け空の遠くにトムラウシ。
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王冠のような山頂は、あと2日の行程だが遠い。
今回はテントや寝袋、コンロに食糧・・若い時のように荷が重い。
歩いているうちに、だんだんと肩に食い込んでくる。
このトシで何故、こんなに背負って登ろうなんて思いついたんだろう。
…仕方ない、言いだしっぺは私だ。
営業小屋がない山域だから、覚悟して来た。
体力と知恵だけを支えに、4日間歩くのだ。
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テント村がにぎやかに出来た。
しかし、避難小屋の後ろに巻雲。 天候悪化の前兆だ。
イヤだなぁ、そう思いながら寝た。
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朝。 台風が近づいているらしい。
降りる人もいるが、日程に余裕があるので進むことにする。
これより先は高根が原。
高低差がなく、高山植物の中をのどかに漫歩できる、ここを楽しみにしていた。
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しばらく歩くと、憧れの花コマクサが群生している。 みんな駆け寄る。
嬉しいなあ。 白い砂礫地のあちらにもそこにも、コマクサ。咲き始めたばかりである。
こんな素敵な所なのに通る人も少ない、ここはなんと贅沢な場所か。
だれもいない尾根に、風が通り抜けるだけ。
誰でも来れる場所なら、きっと花も踏み荒らされるだろう。
人が近づけないゆえの静けさである。
駒草のうすくれないの花咲きて
真昼の尾根に 平和満ちたり
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今日は夜半に雨かもしれないので、テントはやめて避難小屋に泊まることにする。
南から来た別働隊2人と合流。
登山者同士会話がはずんでいるが、私は早くに寝てしまったようだ。
明日雨ならトムラウシは難しい。
さて、どうするか。
朝考えよう、そう思いながら。