猛暑の年である。
生まれて以来、こんなに暑かったことはないと思う。
家にいても外へ出る気にならないので、珍しく休みは読書に明け暮れた。
ずいぶん前に、つまらない小説なんか読むのはやめよう(作家の皆さん、ごめんなさい)と
思って以来、子供の頃からの活字中毒も影をひそめていたのだが。
外の暑さも忘れて、エッセイやノンフィクションを読んでいた。
伊集院静氏、この人については「夏目雅子の夫」くらいしか知識がなかったが、
「別れる力」と題のついた作品は、なかなかに感動させる力があった。
別離の苦しみを潜り抜けてきた人にのみ書ける世界。
年齢が増えるに従って、どんな人にも別離の悲しみはある。
でも、それが人生の力になってゆくのだ。振り返って私もそう思う。
それから佐藤優氏。国家の罠、という本が盛んに売れていたのは記憶にあるが、
その頃はまだ読む暇も気力もなかった。
今回何冊か読んで、その精神力の強さと知力に驚いた。
また、外交という世界がどのようなものであるか、日本にとって今後どれだけ必要なものと
なっていくのか、初めて知った。
このお二人ともに共通しているのは、人格がしっかりと確立されていることである。
伊集院氏には鋭い感性、対して佐藤氏には、少しも感情に流されぬ論理力がある点が
違っているが、共に揺るがぬ芯を持つ大人である。
苦しい経験が、更にそうなることを後押ししたのであろう。
本は、やはり面白いものだった。
しかし猛暑はいつまで続くのだろう。
親を見送ったあとであることを感謝した。
もしも自宅に年寄りがいれば、仕事中でも心配しただろうから。
そういう私も、子供からはクーラーをつけなさい、水分を摂って、と心配されている。
クーラーは、2年前につけた。 今年、有り難く使っている。
私にとって夏は鬼門なのだが、昨年夏から暑さ対策を諸々取ってきた甲斐あって、
今年はだいぶ楽な気がする。
免疫力が落ちていないといいけど。