春は往く
春はひそかに来たり たちまちのうち過ぎゆく
森の中で人知れず花咲かせ
木陰で踊る
水は緑に満々とし 見つむる者の心なぐさむ
水落つる処 桜花散り敷き
十一面観音菩薩 のびやかに笑い給う
訪れ遅き山々に 緑はふもとより出で 今駆け登らんとす
また 山寺の水のほとり 緑の草萌えて 野の仏を飾る
この春の姿を いにしえより人々愛で 語り継ぎうたい継ぎしか
我もまた讃えん 春をもたらす大地の力
心溢れるとも 言葉は足らずつたなし
往く春の候に心は寂しむとも
また来る時を思い 別れを告げむ