コマクサ
高山植物の中で一番好きな、いえあこがれてると言ってもよい花、それはコマクサだ。
もう何十年見ていないだろう。
ぜひとも見たい。 そう思って北の地、大雪山へ登りに行った。
初めての場所では緊張が大きい。
恐る恐る、といった感じで登山口から登りについた。
あ、熊よけの鈴がリュックに入ったままだ。 でも、周りは意外に着けていない。
ではこのまま。
7月というのに緑の色が浅い。 ここではまだ新緑である。
樹林を登りつめると雪渓が出てきた。
さて、そろそろのはずだが。
岩礫のあいだで風に震える、濃いピンクの花。
わ、咲いてる!
心が弾む。 これが見たかったんだから。
もっと登ればたくさんあるはず。
勇んで進む。
森林限界の上、ハイマツしか生えない岩と砂の世界に、美しいコマクサがあたり一面咲いている。
なんという美しさであろうか。 夢のようだ。
北アルプスのコマクサ群生地は、少なくとも1泊の行程を経ないと見ることができない。
しかしここでは、日帰りでたどりつける場所である。
北の地であるゆえの豊穣さであろうか。
もちろん、盗掘を防止するためにロープは張られているが、登山者は皆お行儀よく
マナーを守って歩く。
この山の高山植物の豊かさは、コマクサにとどまらない。
イワブクロ
キバナシャクナゲ
エゾツガザクラ
稜線へ出ると咲いていた、ウルップソウ。 もう盛りを過ぎていた
最初は、コマクサが見れればそれでよし、という気持ちだったが、そこはそれ、行けば
もっと登ろうと、欲が湧くものである。
4時間の行程となる白雲岳までの道のりを、体力不足を感じながらも登ってしまった。
大雪山は火山であるから、九重と似た地質であり登りにくい岩がちの道である。
しかし、氷河が存在したという事実が、決定的に違う風景をもたらしている。
池塘(ちとう)の散在する、岩と雪の山岳、それがこの山の魅力と思えた。
体中から出た汗に心地よさを感じながら、筋力とスタミナの足りなさを反省もしつつ
無事に降りついた。
初めての山は、緊張だけでなく感動も大きなものだと知った。
素晴らしい一日であったことを大自然に感謝。