春ちかし
2月も終わる。
2月から3月にかけての、春の気配が漂いだした頃が好きだ。
もしかしたら、春そのものより好きかもしれない。
休日に遊びに出かけると、必ず道の駅で買い物をする。
この季節は、春を感じさせる食材が多くて楽しい。
齢とともに、少しでいいから美味しいものを食べたい、と思うようになるのは
自然なことなのだろうが、私にとって美味しいもの=質素な家庭料理である。
ふと思いついて、毎日作るおかずをここ数日間撮ってみた。
この時期になると、稚魚が取れだして「釜揚げちりめん」という名まえで出ている。
海辺の「駅」で買った、これは卵とじに。
早いもので、もうツクシを見かけた。 こちらは農村の「駅」で。
これも卵とじだけど、重なるから翌日用。
春の食材は、うす甘く黄色い卵でとじた料理が似合う。 卵も本来の旬は春だというし。
さより。 細長く青みがかった姿が美しく、干物を見るとつい買ってしまう。
以前は夜、洗い物をするついでに塩をして、お酒につけたあと流しの上につるしておくと
翌朝食べるのにちょうど良い干し加減になっていた。
最近、こういうものを売る魚屋さんが近くになくなってしまって残念。
写真のものを焼いてみたが、塩がききすぎだった。 やはり。
春野菜を炒める。
野菜しか使っていない、ほんとの野菜いため。 しかし春の気配がいっぱいで美味しい。
こちらは砂肝といっしょに。 葉つきごぼうに、春の大地の香りがした。
ごぼうの葉も、この若さだと食べられるのだ。
湯豆腐。 まだ寒さが残る時期だから。
お豆腐の上にはふきのとう味噌。 刻んだふきのとうと甘味噌で作る。
生姜を添えるのは冬の名残。 まだまだ寒いから、やせ我慢は禁物だ。
そして暖かさが空気に感じられるようになると、お吸い物の出番がやってくる。
だしは楽にとれるよう、ガラス瓶につけておいて鍋に移すだけ。
焼きアゴは博多雑煮に使う飛び魚。 それに、島原で買っておいただし用の干し海老。
昆布と3種で美味しい吸い物ができる。
寒いころには味噌汁がおいしいが、春には吸い物が似合う。
こうやって整える夕飯を、美味しく頂けることに幸せを感じる。
もう一つ道の駅で必ず買うもの、それは花。
安い上に、長もちするのだ。
帰ってきた時に出迎えてくれる花、これは買って2週目。
花とともに帰りを待っている、黒猫。
幸福のおおもとは、毎日の暮らしにある。
ごらんのように、たいしたものは食べてない。 家も古くて雨漏り、黒ずんだ壁。 でも、
この家のなかに、私の幸福が穏やかに息づいている。