地島へ
昨年の相島に続き、玄界灘に浮かぶ地島へ行った。
この機会を逃せばおそらく行くことはないだろうと、風邪気味なのを押してだ。
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相島とは違って、観光客は少ない。
このあたりは、古代の名族、宗像氏(胸肩とも)が治めた土地で、宗像大社から沖ノ島
まで島づたいに社(やしろ)が続き、沖ノ島からは多くの古代祭祀品が出土して、
世界遺産候補となっている。
船が出るのも、神湊(こうのみなと)という、由緒ありげな地名。
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玄海の波は荒いが、すぐに着く。
上陸しても、周りに店も自販機もない。 民家と陸揚げされたタコツボが並ぶ、正真正銘
の漁港である。
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島一番のピークを目指して歩く。 やがて登りだす。
登り詰めるとあたりは椿の林で、なんとも心休まる。
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山道にこぼれた椿の花が美しい。 いい時期に来たようだ。
ピークからは、真っ青な海が見えて、綺麗だね、と言い合ったが、さしてきびしくもない
登りだったから、感動もさほど大きくないのが残念といえば残念なことで。
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お昼ごはんはまだよ、と叱られて下りゆけば、椿ロードと名付けられた山道にも
落花赤く映え、島はひっそりして、私達だけのもののようだった。
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下り切ると、初めて人に会う。
バイクの男性で、この上の道は倒木が多いから行かない方がよい、と教えてくれた。
以前は自分たちで椿ロードの手入れをしていたけど、大変なのでなかなか手が回らなく
なったのだという。
仕事のかたわらのボランティアだろうから、それも当然のことだろう。
「上に祇園様というお社があるようですけど」と尋ねると、お祖父さんの頃にはみんなで
お参りしていたものの壊れ、その後お父さんが自分で作った社を上げたが、今はまた
古びてしまって、お参りも行き届かないようだ。
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島のこととて、すべてを地元の共同体で行ってきたのだなあ、と感じた。
だんだんに若い人は島を離れているだろうし、共同体での維持は難しいのだ。
別れる時にバイクの荷台から、採ったばかりのハッサクを出して2つくれた。
小さな旅ではあるが、こうやって人情に触れるのは楽しい。
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島の先端に到達して、ようやくランチとなる。
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もう来ることもなさそうな、この場所からは宗像大島へ続く海が広がり、
絶景を楽しみながらの楽しい時間だった。
・「相島にも行ったし、次は大島かな」
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早い時間に帰宅できたので、久しぶりに山菜の天ぷらを作った。
サヨリの干物も美味しい。
良い季節だ。