10月26日
ようやく晴れた10月の朝、マンションの玄関さきに小鳥の羽が散らばっているのを
見た。
ほぼ一羽分散乱しており、鷹の仕業だと思われた。
何かな、この時期だとハイタカかな。渡ってるよね、今ごろ。
ハイタカに思いを馳せながら、自転車通勤ルートを走る。
ああ、海を渡るハイタカが見たい。
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いつものようにまっすぐ行こうとして、いや待て、と思いだしたことがある。
赤坂の街なかに、ちんちくと呼ばれる生垣を巡らした民家があった。
黒田藩に仕えた中でも、下級武士の家は、立派な生垣を維持するのが大変で、ちんちくと
いう背の低い竹を塀の代わりとし、彼らは「ちんちくどん」と呼ばれたという。
今は珍しいその生垣の民家を通勤途中に見つけ、そこを通るのを楽しみにしていたが、
ついに家ごと取り壊しが始まったのだ。お年寄りが住んでおられるんだろうと思っていた。
やはり壊されるのか。
信号を渡って住宅街に入ると、まだ無事。間に合った。
トラックが出入りする中、1枚写した。
ここは福岡城からそう遠くはない。
どんな武士が住んでいたのだろう?
でも、壊されちゃうのか。
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ここへ立ち寄ると、あとは天神の裏通りを走ることになる。
居酒屋やお洒落な洋服店、博多ラーメンの店、と、雑然としている街は私の好むもので
ある。
整然とコンクリート造りのビルが立ち並ぶ街には、人の匂いがしないから。
久しぶりの晴天が嬉しくて、すっきりとした空気の中、まだ眠っている繁華街を走るのは
楽しい。
最後はビル街を通り抜け、那珂川を渡って中洲にたどり着いたとき、また鳥の羽である。
見慣れない大き目の羽。これは拾う。
2枚の根元がくっついていたから、何かに襲われて逃げる途中、抜けたのかもしれない。
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自宅には鳥の羽図鑑がある。 帰宅後調べる。
さて、どの科に属する鳥だろう。大きさから当たりをつけてページをめくるが、該当する
ものはなかなかない。
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探しあぐねて一番前のページから見ていくと、なんとヤマシギの尾羽であった。
先端が灰色だが、裏から見ると白く、これが決めてだった。
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ヤマシギは、体長30センチ。冬の頃の草むらに隠れていて、人が近づくと飛んで逃げる。
飛び上がると、UFOのように水平に飛行する。
たまに出会ったとしてもいつも逃げられてばかりで、とても撮影はさせてくれない。
おそらく北の地方から移動中なのだろうが、よりによって、夜の繁華街、中洲に居た
とは。
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翌日、もう一度立ち寄ってうろうろ探すと、石の階段の端っこに、風に吹き寄せられた
2枚の小さな羽を見つけた。
ヤマシギは、2枚の尾羽と2枚の小羽を残した。
本体はきっと無事だろうが、一体何が襲ったのか。
30センチもある鳥だから、これを襲うのは???
・・・と考えるのが楽しい。
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10月26日、この日は何だか楽しい一日であった。
またこういう日が来ないかな。