小説を読む
ここのところ、小説をよく読む。
子供の頃からの活字中毒であるが、しばらく遠ざかっていたのだ。
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テレビドラマで見た「澪つくし料理帳」を読んでみた。
作者は漫画家でもあるらしいが、ストーリーテラーとしての魅力があって、一気に通読
した。
ある人が言っていたが、昔は才能ある人は小説の道を目指し、現代では漫画家を目指す
と。
(最近では、アニメに向かっているのかもしれない。)
とても面白いが、読後、やはり漫画の世界感と似たものを感じた。
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ヒロインは薄幸だが、才能があって努力家。
高貴な男性とのロマンスもあり、身分を超えての愛が結ばれるところまで行く。
このあたり、少女漫画的ではある。
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だが、この物語の真骨頂はここからで、ヒロインは、高位の旗本である男性の妻に収まる
よりも料理の道を究めることを選ぶのである。(江戸時代であるが)
そしてその後選んだ伴侶は、料理家としての彼女を支える夫となるのである。
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最近のNHKテレビドラマ「あさが来た」では玉木宏、「おんな城主直虎」では高橋一生
が、それぞれヒロインを支える男性を演じて女性ファンの人気を集めたと思う。
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さらに彼女には大志があり、不可能と思われたそのことを、援助者を得て現実のもの
と成し遂げていくのである。
少年ではなく少女のサクセウストーリーという点では、宮崎駿のアニメとも共通する。
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今はこういう時代なのか。 良い時代となったと思う。
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また、伊集院静氏の小説やエッセイもよく読む。
少年譜という小品は感動深かった。
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売春防止法が施行される前夜、娼家のそばに捨てられていた男の赤ん坊が、炭焼きを
生業とする老夫婦に貰われて成長する。
やがて博士に見いだされて養子となり、自分自身も高名な学者となるという話である。
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中国山地の山中で、老夫婦は貧しくつましい暮らしをしながらも、貰った男の子を
精魂込め深い愛情をもって育てる。
植物の研究に訪れた博士は、この子の能力に気づき養子にもらい受けたいと
申し出る。
寂しさに押しひしがれながらも、子供の将来を考えて夫婦は子供を養子に出す。
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養家では必ずしも温かい処遇を受けはしなかったが、少年は忍耐しながら育ってゆく。
やがて東京の中学に入ることになり、初めて親元へ帰宅するが、少年に会いたがっていた
母親は病気で亡くなっており、父親から出生の秘密を告げられる。
すべてのことを心に秘めて、少年は勉学に励み、やがて養父のような学者となって大成し
故郷へ凱旋する。
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演壇から、自分の今があるのは故郷の墓に眠る両親のおかげであると告げ、万雷の
拍手を浴びるのである。
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この作品で作者は、忍耐こそが人間性を育てると言っているかのようである。
家族の結びつき、親の深い愛情が子供にとってどれだけ大事か、そういったことにも
思いを巡らせた。
また伊集院氏のエッセイには、迷いながらの波乱多き青年時代を送った氏が、いつも
援助者に恵まれて来たことが温かく綴られていて、大人の役割、ということも考えた。
私たちは、互いに、無関心であってはならないのだ。
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小説を読むことは、心を外に向かって大きく拡げる。
もうすぐ読書の秋である。