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2016年07月14日

炊き出しの記

順調に日程も進み、明日は追い山である

炊き出し部隊も疲れてきた。

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初日に人気のあったお吸い物も、昨日は半分残った。  

なぜだろう?と考えたり、人気メニューは何だったか思い起こしたり。

差し入れも町内のあちこちから頂くが、昨日のお寿司は「嵐のようになくなった」とか。 

来年もお願いしてみようか。

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仕事のかたわらのきつい任務ではあるが、町内の団結も深まり、

祭りはやはり良いものである。
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待ち時間の合い間に奥さんたちと話すのは、だんだんと住む人が減ってゆく

この町内で、担い手はいつまでいるかということ。

山笠の参加者は増えているのだが、幹部はやはり地域に住んでいないと無理で

ある。

炊き出しをする奥さんたちも、お手伝いに来てくれる人はいるものの、当番を

する町内の女性たちは減ってゆく一方なのだ。

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この先、どうなるのだろうか。

                                                 

2016年07月12日

炊き出しの記

夕方からは追善山である。

昨年亡くなった山笠の功労者を、舁き山が訪れて追善の意を表す。

山笠というと勇壮なイメージが先行するが、私はお汐井取りと並んで、この追善山が

好きだ。

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昼過ぎから、流れのあちこちに故人の写真を掲げた祭壇が作られてゆく。

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葬儀とは違って、この時の祭壇には、しめやかさよりは晴れやかさが漂う。

知人の祭壇にはお参りさせてもらう。

額縁の中の、山笠法被を着て微笑まれる慈顔に懐かしさを感じる。

一生を終えた人に対しては、たとえ生前は対立したことがあったとしても、感じるのは

懐かしさと優しさ、それのみである。

こうやって、自分自身も年を取ったことを思う。

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山がやって来る。

祭壇の方向に向き直る。

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1トンの山と台上がりした人たちを乗せて、90度向き直るのは大変だ。

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台の上から舁き棒の上に正座で進み出て、町総代が口上を述べる。

亡き○○様の追善の為に来ました、と始まって、故人の山笠に対しての献身を称える。

口上が終わると、皆で「祝いめでた」を歌う。手拍子付きである。

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そして、博多手一本で手締め。


見ていて思うのは、これはたいへんな名誉である、ということ。

大勢の人が動かす山笠が、故人のためにやってくるのだ。   

現代社会では、お金のために行動することが当たり前である。

しかし、長いあいだそうではなく、名誉のために人は動き社会の為に尽くして

生きて来たのではないか、そう思った。

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今年の追善山は5軒。

みなさん、お疲れだったろうが、故人の魂はさぞや喜んでいると思われる。

                                                       


2016年07月11日

炊き出しの記

山笠3日目の7月11日、今朝は朝山だった。

4時に目覚ましで起床。

最近は早朝のバードウォッチングもさぼっているので、辛い寝起きである。

なんとか4時50分に詰所へ行くと、お弁当はすでに来ていて、お手伝いのお母さんたちも

数人見える。

「みなさん、早くからお疲れ様です」

挨拶して仕事にかかる。

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以前は、お弁当が人数に足りず、青くなってほか弁屋さんに駆け込んだこともあったと

いうが、今日は余裕で間に合う。

もっともかなり多めに頼んでおり、余ったらメンバーが買い取る、という裏技を使って

いる。

裏方は大変なのだ。

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アサリ貝は味噌汁に、としか思っていなかった私が驚いたのは、すまし汁に仕立てる

ことである。

昔からのしきたりらしい。

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なかなかに美味しく、いつも好評だ。  2キロのアサリを使う。

走って水をかけられた後は、温かいものが嬉しいということである。

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伝統で、朝山の時には町総代はいつもの法被ではない。

町によって多少は違うらしいが、大黒流れでは、麻の帷子(かたびら)を着て

わらじ履きである。

このいでたちで、町内を舁き山に乗って(台上がり)走る。

台上がり後のこととて、写させてもらった時には、足袋は濡れてわらの色が付き、

洗濯は大変だろうな、と思わせられた。

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これは土居流れの水法被であるが、同じ流れでも町内ごとに全くデザインが違う。

そして、同じアーケードの商店街なのに、わが町は大黒流れ、その先の町は

土居流れ。

どうして流れが違うのかと聞けば、「太閤町割りからの伝統」という答えが返って

来る。

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博多は古き伝統の町なのだ。

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2016年07月10日

炊き出しの記

今年も山笠が始まった。

川端に店を移して以来毎年の行事だが、今年は久しぶりの買い物当番である。

7月9日のお汐井取りに始まって、山笠期間中の1週間は毎日気が抜けない。

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初日は鉢盛、おにぎり、吸い物、それにつまみとして枝豆・チヂミ・蒲鉾が加わる。

山笠詰所となっている臨時の小屋に、たくさんのお母さんたちがお手伝いとしてやって

きてくれた。

商店街の「ごりょんさん」たちも高齢化が進み、お手伝いの方たちなしには

やっていけない。  有り難いことである。

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談笑しながら待つうち、空は暮れて紺色となってゆく。

薄暮となった街なかに、やがて潮騒のように「おっしょい おっしょい」の声が

遠く近く聞こえ始める。 この時間は、味わいがあって好きだ。

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提灯をともした一団が走ってくる。

先頭は高張提灯、そのあとに「町総代」だの「取締」だのと書き抜いた提灯が続く。

近代的な商店街の中を、この時だけは昔ながらの山笠装束、足元は脚絆に地下足袋。

町内ごとに違う法被を着て、一目でどこの流れか判るという装置は、昔そのままである。

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中には子供たちもいて、地元では地域ぐるみでこの子たちを育てている。

年上のおじさんやお兄さんたちから、よっ○○、と呼びかけられ、常日頃から目を

かけられて成長するという環境は、今の日本では本当に少なくなってしまった。

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櫛田神社にお参りして当番町へ帰ったあと、ようやく詰所へ戻って来る。

時刻は9時近い。

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ここから炊き出し部隊は忙しくなる。

お吸い物をついで、お酒に燗をつけて。

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ビールが行き渡ったところで総代の挨拶。

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酒宴が始まると、あとは若手と呼ばれる参加者たちが取り仕切る。

「ビール」「吸い物お代わり」「熱燗」、と、呼ばれる毎にテーブルの狭いすき間を山笠

法被で走り回る。 

疲れ果てたあとの仕事であるから、さぞ辛かろうと思うが、先輩たちは

「みんなこうやってきたと」と当然の顔。

上下関係の厳しさも、山笠の良さの一つであろう。

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なんとか無事終わって、さて明日はどうなるか。