« 2015年01月 | メイン | 2015年03月 »

2015年02月22日

空の上で

2月は飛行機に乗ることが多かった。

空の上で何をしているかというと、誰しもそうだろうが、

音楽を聴く ビデオを見る 読書 ボンヤリしている、このどれかである。

                                                             ・

ある日は、久しぶりにバイオリンを聴いた。

初めて聴く千住真理子の、おしゃべりと共に時間が流れていく。

「初めて聴いたのは中学生の時で、この曲が弾けるバイオリニストになろうと思いました。」

「ヴィターリのシャコンヌ」が紹介される。

弾き出しでああこれは、と思ったが、その通り感激した。

                                                              ・
                                                              ・
涙は出ないのに泣ける。

空の上で、見知らぬ人に両脇をはさまれたまま泣いた。

                                                              ・
IMG_0400_R.JPG


                                                              ・

またある日は文庫本を読んだ。

まとめ買いした本がテーブルの上に積んである、その中から、一番薄いのを

出がけにバッグに放り込んだ。

「岡潔 春宵十話」

いきなり最初のページからすごい。

 (数学なんかやって人類にどういう利益があるのだと問われて)

  −−スミレはただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野に

     どのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだーー

うわ、スゴ。

この方は信仰をお持ちなのだろうと読んでいくと、やはりそのようだ。

また、

  理想はおそろしくひきつける力を持っており、見たことがないのに知っているような

  気持ちになる。それは、見たことがない母を探し求めている子が、他の人を見ても

  これは違うとすぐに気がつくのに似ている。

迫力ある言葉である。

                                                              ・

                                                              ・

こうやって旅で刺激を受けても、帰れば元の木阿弥、多忙に紛れて

いつか忘れかけてしまうのが悲しい。

何かを為そうとすれば、人は孤独でなければいけないと、岡氏も言っておられるが、

日ごろは帰宅後も、刺激を求めるよりは憩いが先となる。

仕方のないことでもあって、せめて週末なりと静かに過ごしたいものではあるが。


                                                              ・
                                            
                                                              ・

  遠山に雪の降りたる日の朝は  大気を弦の音わたりてゆくか

                                                              ・
  冷気打ち いま咲き初めししら梅の 花明りして山里清し

                                                              ・
  黒い田に 青き麦の芽並び出て 水のきらめく如月うれし

                                                              ・
  人も無き 凍れる波止にいのち燃やし 群れ飛ぶ鷗 明日を思わず

 BL3F2290Gaa_R.jpg