低山登り
S兄弟はふたごだ。
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お父さんの介護をするため、2人とも東京から帰ってきた。
最初は弟が、福岡の子会社に出向希望を出して単身赴任で。
しばらく親子2人での暮らしが続いたが、少しづつ認知の症状が出始めたので、
兄貴が会社を辞めて帰ってきた。 こちらも単身である。
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山に行こうよ、という誘いをもらって、時々近くの低山に一緒に登っている。
兄貴の方は高校時代のクラスメイト、そして3人とも幼稚園が一緒という、
とってもローカル?な関係。 なんの遠慮もない。
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今日は、M先輩も入れて4人である。
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「オヤジさー、ボケが治って元気ぴんぴんになったんだよぉ」
「俺は会社まで辞めてきたのに」
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「昼間の話し相手がいるとやっぱり違うんだね、いいことじゃないの」
「まあ、そうなんだけどさ」
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という訳で、S家では現在親子3人、水入らずの生活が続いている。
お父さん、幸せだろうな。
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私は普段一人で山に行くことが多く、黙々と登り、降りてくる。
しかしここでは、休憩タイムにはビールやボジョレヌーボーが振る舞われ、炭焼き地鶏や
塩タンが次々に出る。
「荷物のほとんどは液体だよ」
「いつもはストイックな山登りなんだけど、こういう享楽的な山もいいねー」
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M先輩がお湯を用意するので、カップラーメンを持ってくるように。
そういう指令が出ていて皆持参したが、私のだけが大きいと、物議をかもす。
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気温は零度近く、低山であっても寒さが厳しい。
年末が近いのだから。
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今日はビールはさすがにやめたよ。
焼酎が出てきた。 お湯割りはありがたい。
ねえM先輩、山に湯呑茶碗もってくる人、初めて見たんだけど。
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師走の山は寒くて、そしてあったかだった。