同期会
飛行機が松本空港に向かって高度を下げると、雪の山々が見えた。
血の気が沸きあがってきた。 ああ、北アルプス、北アルプス!
昨年の10月に決まった大学のサークル同期会がほんとに実現。
長野までやってきたのだ。
1名のみ仕事で来られず、6名が集まった。
昔のような山行きは無理であるから、ケーブルで八ヶ岳の中腹に登る。
次の日、霧が峰を歩く。 この二つが今回の課題である。
八ヶ岳。 思い出の山である。
私ね、初めて登った本格的な山が八ヶ岳だったの。
ああ、僕もだよ
あ、そうか、一緒だったよね。
私は10回くらいは登ったと思う。 初めての冬山もここだった。
ケーブルの駅から多少は歩いてみる。
登山路は雪に埋もれて、これ以上行けない。 誰もいない北八つの森は、夏を待っていた。
あの頃、何十年もたってから皆で来るなんて思ってみただろうか。
並んで記念写真。 撮ったあと集まって、液晶画面を見て「おーいいね!」と言い合う。
霧が峰を歩く頃には、だいぶ足も馴れてきた。
部屋にあったお菓子だよ、とみんなに一つづつ配る人。
私だけは個室だったから、その分一つ足りないはず。
K氏、自分は食べないでみんなに渡したな、と、思いながらも口には出さず、
美味しいねと食べる。
霧が峰は眺望のよい高原で、車山の上からは北・中央・南アルプス、八ヶ岳、富士山
そして御嶽山に乗鞍と、日本の屋根がすべて見えるのだ。
ああ、飛行機に乗って来た甲斐があったよ。
そうだね
あれが槍であそこが穂高、と、名前を言いながら山々を指していく。
自分が登っていないところは分からないが、6人いれば誰かが言い当て、見えるすべてが
確定してゆく。
若き日に登った山を並んで見つめる
6人の集まりが、ともに歩くうち有機的につながって一つになってくる。
東京で飲んでいるのとは明らかに違う。 これが、山に登るという行為の素晴らしさだろう。
そう感じるようになった頃、解散の時はやってきた。
茅野駅で東と西とに別れる。
バイバイ、また会おうね、元気でな。
隣のホームに特急が滑り込む。
手を振って乗り込んでいく。こちらも手を振る。
列車が走り出した。 車内で3人そろって手を振るのが見える。
こちらの3人も手を振る。 私は両手を振った。
同級生っていいね。
気を使わないもんな
話も合うしな
また来年のお楽しみ。
次は東京組が幹事である。
私に回って来た時には、九重と阿蘇。 そう決めている。
願わくは、みんなが元気でいつまでも続けられますように。
君らみな 明るき顔して歩きたり
歳月(としつき)の影は なきがごとしに