旭日岳
「せっかく来たんだから」
コマクサ見物のあと数日後、また山に登ることにした。
大雪の最高峰、旭日岳である。
北海道に来たら、やっぱりこの山でしょ。
ロープウェイでぐーんぐーんと登ってゆく。 目の下には新緑の木々。
降り立った山頂駅から頂上まで、約2時間。
だらだらと登る山より、急傾斜をふうふう行く方が好き。
少しずつ高度が上がる。 噴煙が硫黄くさい。
山頂直下にある、「金庫岩」。 先ほどの噴煙が眼下に見え、遠く旭川は雲の下。
山登りの醍醐味は、やはりこの眺望にある。
山頂からの眺め。
九重と同じく、火山性の丸っこい、穏やかな山容である。
これは先日、逆方向からこちらを見たもの。 北側と南側では雪の残り方がこうも違う。
山頂からは急な下り。
細かい砂礫の急傾斜は、足元がおぼつかない。 あれあれ、とうとう転んでしまった。
また転びかける。 いけない、こういう時はひと息いれなきゃ。
なんとかふんばって更に下ると、今度は雪渓。
雪は腐ってザクザクだが、滑りやすくてこれも難関。 ピッケルもストックも持っていないし。
人の足跡をたどろうと思うものの、滑って下りた跡ばかりで役に立たない。
こういう時は、足を雪面にフラットに置いては滑るのだが。
先をゆく人達も難儀している。
ちょっと傾斜が楽になった。 かかとを蹴りだしてバランスよく下る。
よし、コツがつかめた、もう大丈夫。
ザクザク、と、がに股で調子よく下り、ストックを突きながらものろのろ歩いている人を、
素手で快調に追い越してゆく。 気持ちいい。
こうやって登った旭日岳だが、本当の目的は後半にあった。
また高山植物である。
山すそに広がるお花畑は、「日本一」の広さだという。
しかし残念ながら、稜線に咲くチングルマは、半分散っていた。
散ったばかり。 花の時期は、あっという間に過ぎるのだ。
思ったとおり、山すそのお花畑は2日前ならば、というところ。
でも、まだまだ見事なものである。
雪渓が消えかけた場所では、早くもリュウキンカの花が咲き誇っている。
この生命力の強さよ。
そして私の足も、先日よりはずいぶんと快調だった。
年齢を重ねても、生命は常に前を向くとみえる。
・・・頑張らなくては・・・・