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2011年08月20日

梓川上流

槍ヶ岳の周囲から雪解け水を集めて流れ下る梓川は、松本市のあたりで千曲川となり

やがて大河・信濃川となって日本海にそそぐ。

梓とは水目桜の別名らしいが、この木が多いところから川の名になったと。

                                                     

私の本棚は水目桜でできていて、どっしりと重く、居間に何十年も鎮座している。

一生お付き合いするに値する、立派な材だ。
  
                                                       

弓の材料としても欠かせぬものだったらしく、梓弓(あずさゆみ)という単語は

万葉集によく出る。

   置(お)きて行(ゆ)かば 妹(いも)は ま愛(かな)し 持(も)ちて行く

   梓(あづさ)の弓(ゆみ)の 弓束(ゆつか)にもがも


ちょっと難しいが、防人として旅立つ夫が置いてゆく妻に残した歌だ。

 ――置いてゆくのはかなしいことだ、お前が梓弓だったら携えてゆけるのに――


                                                      

今日は徳沢から上高地まで、この梓川に沿って歩く。

                                                      

川幅が広がったあたりで、コマドリの声が聞こえ始める。

うっそうとした森のどこに居るのか、かなり数は多そうだ。

 ヒン、カラカラカラ。  向こうからもヒン、カラカラと答える。

いいなあ。  言葉なく、幸せを、心いっぱいに感じるのみ。

                                                      

コマドリの声のシャワーが尽きるあたりで、明神池。

                                                      

北アルプスを世人に知らしめたウェストンが、ガイドとして雇ったのは上条嘉門次。

彼が狩人として暮らしていた明神池そばの小屋は、現在「嘉門次小屋」として営業している。

最初にここを訪れたとき、私は小学校3年だったが、小さな小屋に元気なおばあさんが

一人で番をしていた。 

その記憶とは打って変わり、今は立派なものになっている。


                                                       


イワナを食べようということになって入ってみた。

お兄さんが、川の中の生簀からイワナをつかみだして串に刺す。

いろりの回りに、串を立てて炙り焼き。 本格的だ。

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素晴らしい美味しさだった。 網で焼くのとは根本的に違う。骨まで火が通る。

                                                        


イワナはそのあたりの川にも居る。

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こうやって水面近くでエサを待っているのだ。

蛾が近づくと、大きな口を開いて踊り出て、つかまえる。


                                                       

歩き疲れ、冷たい流れのほとりに腰を下ろして休む。

九州では珍しい、キツリフネが咲いている。

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こちらはクサボタン

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小さな小さな花だが、この群落があると良い匂いがする。


                                                   
持っているペットボトルを流れにつけておいたら、冷たくなっていた。

3000メートルから下り落ちる雪どけ水は、清冽である。

                                                       


さて、そろそろ上高地の喧騒が近い。

河童橋のあたりで見上げる穂高は いつ見ても素晴らしい。

                                                                                                                     


と、救急車のサイレンが近づく。

過去にこの山域で、何人もの友人知己を亡くした。 胸が騒ぐ。 岳沢の方向だ。

                                                       


かなりの時間ののち、戻っていったが、サイレンは鳴っている。

よかった、ケガで済んだのだろう。 レンジャーの車があとに続く。 どうぞご無事で。


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                                   トリカブト

                                                    

やがてだんだんと陽が落ち、涼しい風が吹き渡る梓川に夕暮れがやってきた。
                                                   
                                                   

   立ち向ふ 穂高が嶽(たけ)に 夕日さし
       沸きのぼる雲は いゆきかえらふ   若山 牧水

                                              
                                                    
山に登れなかった物足りなさが残った。

2011年08月18日

山の宿

上高地へ久しぶりに行った。

宿は今回も徳沢園。

バスを降りて穂高方面へ2時間歩いた場所にあるが、良い宿だ。


                                                         
フロントには純白の百合、カサブランカがたっぷりと活けてある。

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階段にも。 

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黒光りする壁や廊下。 ガラスには幾何学模様が擦ってあり、格調のある建物だ。


雑魚寝用の相部屋もあって、紛れもない山の宿ではあるが、さりげなくガレのランプが

置いてあったり。 面白いところである。

ranpu_R.jpg


周りには春ニレの林が広がり、中を冷たい清流が貫く。

ここは人里から遠い、別世界だ。 更に奥へ進めば、穂高や槍ヶ岳へ至る。

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夕食。 思いもしない豪華さ。

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いわゆる旅館食のように、材料をいじり回した料理ではなく、素材を生かしてある。


左下の魚介類の酢の物、海老が冷凍でないように感じたのは思い過ごしか?

人は歩いてくるしかないのだが、関係者の車は入るルートがあるようだ。


ご飯はお櫃に入ってきた。

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メインはステーキ。もうお腹いっぱいです〜 

林檎がひとかけついて、まだ青い味なのも興をそそる。

締めにお蕎麦。

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さすがは蕎麦の本場。 暖かいつゆに入っていても伸びず美味しい。


こういう山の宿は珍しいと思う。 

今回は登山ではないので、もてなしが なおのこと嬉しい。

山へ登るときは、ご飯や建物がどんなでも一向に構わないが、観光だとそうはいかないのだ。


どんな主人が運営しているのかと、つい考える。 教養のある人であろう。

                                                        


朝。 楽しみにしていた小鳥の声は、今の時期は少なくてガッカリ。

6月に来たときには、周り中で響くキツツキのドラミング音で目覚めたのだけど。

代わりに、色とりどりのテントが見下ろせた。  夏山のシーズン真っ盛りなのだ。

大きな荷物を背負った逞しい若者が、窓の下をザクザクと小石を蹴立てて登ってゆく。

                                                        
さて、私たちも歩き始めよう。

気温は13度、さわやか。


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2011年08月06日

車のはなし

バードウォッチングという趣味は、車を酷使する。

  1、 走行距離が異常なほど多い

  2、 横っぱらに ムチャクチャに擦り傷が着く

  3、 深夜の高速道路を走るため 虫がフロントバンパーに貼りついてやがて穴が開く


アノ鳥が出た、コノ鳥が見つかった、といっては走り回るから、5年も経たないのに

車屋さんから「そろそろ買い替えを」と勧められる。  むろん、まだ買わないけど。


いつかは、後輪のあたりでガタゴトと音がした。

見てもらうと、車軸を受けるベアリングの潤滑油がなくなっている、と。

「走行中に火を噴くこともあるんですよ、無事でよかったですねえ」 

その状態のまま鹿児島往復したのだ。

ゾーッとしたが、それでも車は止められない。 

                                                    


冬 タカのシーズンともなると、チュウヒを追って夢中で駆け回る

枯れた草や木の枝がガサガサっと車を擦っていくが 止まったら見失う、止まれるものか

かくて、点検のたびに車屋さんを嘆かせる擦り傷だらけのわが車。

                                                        


そして、休日割引がなくなったあと、半額浮かせようと深夜の中国道を走ったら

イヤになるくらい虫の死骸が貼りついた。

                                                        


このまま放っとくと、また小さな穴が増える。 虫には蟻酸があり、鉄を溶かすのだ。

                                                        


福岡近辺の洗車コーナーでは、洗車機だけの所が多く、これを取るのは難しい。

用件もあることだし、北九州方面へ走ってみよう。

福岡から東へ走ると、1円ずつガソリンの値段が下がっていく。

遠賀川を越えると一気に安くなり、スタンドも広いところが増える。

洗車機の手前に拭き上げコーナーと洗剤・バケツ・雑巾セットが見える。 ここ、ここ。


                                                       

特殊な洗剤なのだろう、雑巾で拭うと、あれま不思議、きれいに取れていく。

いやあ、嬉しいなぁ。 サービスの質とか、そういうことを考えさせてくれる。

                                                       

きれいになった私の車。 街を走っている普通の車に引けをとらないほどになった。

荒っぽい主人ではあるが、私なりに車を愛しているのだ。 

いつでもどこへでも連れて行ってくれて、自由を保障してくれるから。
                                                       


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そろそろシギたちが干潟に戻ってくる季節

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山でも 秋の気配がささやきだすだろう