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Tさんを悼む

久しぶりに山道を歩いていると携帯が鳴ります。

リュックから出すあいだに鳴り止むかと危ぶんだけど鳴り止まない。


おや、Tさんからだ、珍しい。

出ると女性の声で、「私Tの家内です」と言われる。


悪い予感。

思ったとおり、「先週Tが亡くなったんです」と続く。


体調が悪そうなのは察していました。でも、そこまでとは。

Tさんはバードウォッチングの先輩です。

お会いしたことは数回しかないけれど心通うものがあり、メールでのお付き合いをここ数年

続けていました。


9歳の頃からの鳥好きだということで、何か分らない鳥の写真を撮ったときには教わる、という

やり取りの中にも、とにかく鳥がお好きなのが伝わりました。


「酒井さんのことはよく主人から聞いていました」と言われるのに、

「ああ仲の良いご夫婦だったんだ」と思うまもなく、電話の向こうの奥さんの声がたちまち

涙声になってゆきます。


4月の下旬、「南公園に行こうと思います」という携帯メールを頂いたのが最後でしたが

「結局駐車場がいっぱいで、帰って来ました。そして次の日の夜倒れて、1ヶ月の闘病のあと

亡くなったんです。かわいそうでした。」と仰る。


Tさんは、特にクマタカに詳しい方でした。

調査員として時々山に数週間入っておられたけれど、詳しいことは種を守るため秘密だろうと

私も遠慮して聞きませんでした。


でも今年のはじめ、「来年繁殖をする場所へヒナを見に連れて行ってあげる」という約束を

もらったのです。

ああ、果たされないままTさんは亡くなってしまわれた。


奥さんのお話を聞くと、「まだやりたいことがたくさんある。5年10年は生きていたい」と

言われていたとか。

「鳥の写真がたくさん出てきたんです。私が言うのもなんだけど、とってもきれいに

撮ってるんですよ。こんなに一生懸命にやってたのかと思って」と。

お礼と共に電話を切ったあと、だんだんにあの約束をされた背景が思われて

悲しくなってきました。


ピークまで登る気も失せて、下山します。


途中珍しくジュウイチの声。

荷物を降ろして耳を澄ませながら、「白い百合を送ろう」と思います。

男性ではあっても、白い百合が似合う方だったような気がする。


「儚いものですね」という奥さんの声がまだ耳に残る。


そう、この世ははかないものなのでしょう。


Tさん、あそこかな、と思ってる場所へ来年行って見ようと思います。

クマタカのヒナがもし見れたら、貴方の導きだと思います。


ハヤブサ。オスだと思ったこの写真を「これはメスです」と言われて識別できるようになりたい

という意思が生まれました。

hayabusa.jpg


その後勉強して、ようやく多少分ってきました。

これはメス

mesu.jpg


これはオス。

osu.jpg


感謝しております。どうぞ安らかに。そして、残されたご家族の悲しみが早く癒えますように。


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